命売ります/ 三島由紀夫
奥さんが書店で帯を見て買ってきた三島由紀夫、なんとなく時間あって暇だったので2時間かからず読了。夏の図書、読書感想文。
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1998/02
- メディア: 文庫
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三島といえば最初に読んだのが高校生の頃で、「潮騒」読んで「なんだ、変人みたいな言われ方してるけどすごく綺麗な文章を書くまともな人じゃないか」と思った記憶が。もう20年以上前だ。
それがどうやら得意な本だということを後で知り、金閣寺や他にも何冊か読んだなあと思うけどずいぶん久しぶり。
キャラクターのプロットが良くて、セクシーな描写にドキドキしつつ、読みやすく情景の浮かびやすいドラマでサクサクと読める。なんか、星新一のショートショートみたいなテンポ感もあったな。緩やかに短編が繋がっていき、最後にクライマックスがやってくるのだけれど、どうもクライマックスの盛り上がり方はイマイチだったな。淡々と終わっていくことがホラーだという考え方もあるけれど、伊坂幸太郎的なカタルシスも爽快感もなく、「で、どうなったのよ」というしこりが残る。
途中の展開が面白かっただけに残念。市川崑のコメディーみたいなシニカルさもあり、文章の美しさや文体がカジュアルな感じなのも読みやすくて面白かったので最後が少し不満。
「三島由紀夫らしさ」みたいなものはやっぱり「どの本を読んでもなんとなく通底してるもの」ではなくて、「本ごとに全然違う感じになっているが、どれもしっくりくる」という多彩さにあるような気がする。本の中の三島と、現実に腹を割いた三島はなんとなくまた別人というのか。
主人公の羽二男のシニカルさが三島らしいといえばそうなのかもしれないけれど、なんかそれとも違う。しかし、仕組まれていたとしてもそんなにモテるならそれはそれで悪くないよねえ。村上春樹しかり、なぜ小説の主人公はそんなにモテるのだろう。羨ましい。