村上春樹「騎士団長殺し 第1部」
毎度のように村上春樹の新作が出たら買ってしまうね。前は田崎つくるか。そんなにインパクトに残ってないな。その前が「1Q84」でこれは長編でなかなかの読み応えだった。
そうして2017年にやって来た騎士団長。まだ第1部だけで展開は分かりかねる部分もあるしネタバレはなんとなく避けて軽くおさらい。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2017/02/24
- メディア: 単行本
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何にも前知識なく本を手に取る。とりあえずまとめて2冊をAmazonで購入。売り切れることはないと思うけど入手出来ずやきもきするのは嫌だったので。
ページをめくって20ページほど、とにかく「村上春樹的」な文章で笑いがこみ上げる。辟易する人もいれば投げ出す人もいるだろう。僕はたまらず笑った。好き嫌いに関わらず、ツッコミどころも極めて多いけどとにかく村上春樹的。単語の選び方、主人公のキャラクター、言い回し、性描写、釘を刺されるように章の終わりで示唆されるこの先の展開、濃いキャラクター。好むと好まざるに関わらず。
酷いとも思うし面白くもあるし、またこの流れかと新喜劇のようなお約束に安心感すらある。そういう意味でもとても村上春樹的で、それゆえの面白さやワクワクもあったりする。それを持ってして「これは酷い、村上春樹はもう終わった」ということもできるし「さすが俺らの春樹、待ってました!」とも言える。
率直な意見、感想としては「村上春樹メーカー」的だなと思いましたよ。「取扱説明書を村上春樹が書いたら」みたいな。ラウド・スピーカーだったり、オレンジ・ジュースだったり、カティサークだったりするやつね。私は混乱している。
これね
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村上春樹の過去の作品を単語ごとに分解して言語解析した「村上春樹的世界の文章ジェネレーター」があるとして、そこにあらすじを放り込むと村上春樹的文章が出来上がる。かっこう。やれやれ、今は21世紀だぜと僕は思った。もしかしたら声に出ていたかもしれないが構わない。声に出てたからといってどうなるというのだ。
でもその文章はどの「村上春樹的文章」とも違うし、1番よく出来た村上春樹的文章だということもできる。僕が彼の文体から受けた印象は大まかにいってそういうことになる。やれやれ。
なので、村上春樹が好きな人には楽しめる要素と絶望的な要素があるし、そんなに知らない人には入門編的な要素もある。僕は結構好きですよ。第1部、第2部となってて続きが出るのかもわからないけれど、一冊読み終わって続きは楽しみだし、村上春樹の本を読むときの期待感は全く損なわれない。
コトリと音を立てて動き出す物語、人と人とは分かり合えないという本質的悲しさ、日常の裏側にあるなんだかよくわからないもの。例えば伊坂幸太郎の新しい本を読むときも「伊坂幸太郎的であること」を求めてるわけだしね。裏切られるかどうかはこれから。
下巻楽しみ